桂さんの「宿屋仇」
大阪日本橋の宿屋に侍が一人泊まった。静かな部屋をとの注文である。ところが、
そのあとからその侍の部屋の隣へ入ったのが兵庫の若い者三人連れ。芸者をあげて
散財しかけると隣の侍から「お静かに」をくらい、今度は相撲の話に身が入って座
敷で相撲をとるとまたしても「お静かに」をくらう。もうこの上はと色事の話をす
ることにする。
三人の中の源兵衛が、八年前高槻で小柳彦九郎という侍の嫁はんと間男し、その
女と義弟を殺害して金を奪って逃げたのはこのわしやと、よそで聞いた話をわがこ
とのように言って自慢する。ところが、隣の部屋の侍がその小柳彦九郎で、源兵衛
を仇として討つと言い出す。懸命の弁解も聞き入れられず、翌日に日本橋で三人ま
とめて首を斬るといわれて、さすがの三人も青菜に塩。宿屋の奉公人たちも一人で
も逃がしたら一大事とまんじりともせず夜を明かした。
一方、侍の方は豪胆なもので、その晩はぐっすりと睡眠をとり、翌朝機嫌よく出
立しようとするので、宿の者がゆうぺの仇討の一件はどうなったのかとたずねると、
あれはみなウソじゃと言う。なんでそんな人騒がせなウソをと抗議すると、侍「あ
あ申さんと、また夜通し寝かしおらんわい」。

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